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麦汁が若ビールに変身 – 主発酵工程

前回の記事「酵母 – ビール醸造の神秘を司る」でアルコール発酵の主役「酵母」を紹介しました。その酵母が冷却された麦汁に添加されると、いよいよアルコール発酵の始まりです。

麦汁がビールに姿を変えていく発酵工程は大きく二つに分けることができます。アルコール発酵が集中的に進む「主発酵工程」と、それに続く「熟成(貯蔵)工程」です。今回はその前半戦「主発酵工程」の紹介です。

アルコールが一気に作られます

ここでアルコール発酵のおさらいです。以下の化学式、覚えていますか?

 C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2

糖がアルコールと炭酸ガスに分解されるのがアルコール発酵でしたね。
麦汁に添加された酵母がこの反応をせっせと行うのが主発酵工程です。ビールのアルコールはほとんどがこの間に生成されます。下の写真はガージェリーの製造委託先であるエチゴビール社の発酵タンク室です。


発酵タンクは上部が円筒形、下部が円錐形をしており、その形状から「コニカルタンク」とも呼ばれるタイプです。1本の容量は24KL(キロリットル)で、3仕込分の麦汁を収容できる大きさです。大手メーカーですと1本の容量が500KLもあるような大型タンクが使われています。

タンク上部のマンホールにあるガラス窓からアルコール発酵が進行しているタンク内部を覗いて見たのが下の写真です。発酵で生じる炭酸ガスによって麦汁表面が泡立っています。発酵の最盛期には、麦汁に溶け切れない炭酸ガスがタンクの排気管から勢いよく排出されています。アルコールがどんどん生成されている様子が目に見えるようです。

温度管理によって発酵を操ります

出来上がるビールの香味は発酵の温度によって変わってきます。それぞれのビールによって最適の発酵温度経過というべきものがあります。発酵タンクには冷却用の冷媒が流れるジャケットが巻きつけられており、冷媒の流量を調節することで発酵温度を操ります。
タンク内でアルコール発酵が始まると酵母の活動が活発になって麦汁の温度が上がってきますが、ガージェリーの場合は最高温度が20℃を保つように制御します。上がり過ぎも良くありません。アルコールができるということは同時に糖が減るということなので、発酵の進行と共に麦汁の糖度は徐々に下がってきます。この糖度を毎日測定し、狙いとする糖度に近付いてきたら酵母の働きを止めて主発酵を終了させるべく温度を強制的に下げていきます。

タンク底に沈んだ酵母を回収します

主発酵が終了すると酵母はタンク底に沈みます。これをタンク底から抜いて再利用するわけですが、そのためにタンク底は円錐形になっているのが都合よいのです。タンク底のバルブを開ければまず酵母が流れ出てくるのが想像できますよね。

これで主発酵は終了です。この段階で麦汁は一応ビールと呼んで良い状態になっていますが、その香味はまだ不完全で決して美味しいものではありません。そのため、この段階のビールは「若ビール」と呼ばれます。次はいよいよ最終の「熟成工程」に移ります。

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