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リュトン・グラスの生みの親 – デザイナー 太田益美さん

GARGERYの象徴としてすっかり定着したリュトン・グラス。今回は、このグラスの生みの親であるデザイナー、太田益美(おおたますみ)さんの登場です。

太田さんはデザイン事務所 m+oss(モス)を立ち上げられ、CIからエディトリアルまで幅広く活躍されているデザイナーです。最初の出会いは2002年早春、まだGARGERYブランドの影も形も見えなかった当時から、デザイナーとしてプロジェクトに参加していただきました。

太田さんにデザインしていただいたのは、リュトン・グラス、ゴブヌ神のシンボルマーク、GARGERYのロゴ、壜商品GARGERY23のラベル等、GARGERYブランドに関わる多くのアイテム。デザイン誕生に至る経緯、それらに込めた思い等、開発当時を振り返りながらお話を伺いました。

太田氏

リュトン・グラス – 全ての出発点は「Archetype」

GARGERYブランドには核となる概念=コンセプトがあります。そのキーワードは「Archetype(元型)」。そこには、ビールの原点を追い求めたいという我々の思いが込められています。

リュトンデッサン小
リュトン・グラスの出発点となったこのデッサンが太田さんから提案されたのは2002年6月のこと。このデッサンにつながったのは、それまでの議論の中で形作られたGARGERYのコンセプト「Archetype」というキーワードだったと太田さんは語ります。

石に凹みができる、あるいは木をちょっとくり抜くとそこに水がたまる。つまり、真っ平らな所にちょっと凹みができることで、それが器だったり、コップだったりになる・・・という発想がありました。その一番シンプルな形は、横から見ると三角形でした。
また、ビールを飲むスタイルで、何か面白いことはできないだろうか、ゴブレットの脚を取り去ってみました。「あっ、角杯じゃないか!」というひらめき。これは原点に行き着いたなと思いましたよ。そして、一瞬であのスケッチにつながりました。
「Archetype」というコンセプトから、それが器の起源である凹みという発想につながり、さらに何とか立てないといけないから四角い台ができたのです。ただ単に「かっこいいグラス」を作ってくれ・・・と言われたのでは、絶対にこういうグラスにはならなかったと思います。

ルーン文字でビールの原点にパワーを

リュトン・グラスの表面にはルーン文字がデザインされています。

ルーン文字小
GARGERYのフラッグシップであるスタウトビールはアイルランドが生まれ故郷。アイリッシュを出発点に、太田さんの発想はケルトへとつながります。

ケルト人は文字というものは持たず、全ては口伝だったのですが、やがてアルファベットなどの文字を使い始めます。アルファベットの原点は何か・・・という考えがそこに重なり、行き着いたのがルーン文字。リュトン・グラスが表現するビールの原点にさらにパワーが加わったのです。
繰り返しになりますが、最初のArchetypeというコンセプトがなかったらこのようにはいかなかったでしょう。

GARGERYのシンボルマーク – ゴブヌ神

GARGERYのシンボルマークはケルトの鍛冶神「ゴブヌ」です。
「GARGERYは鍛冶屋、それをケルトで追ってみたら、偶然行き当ったところに鍛冶神ゴブヌがいた。調べてみるとケルトの鍛冶神は酒の醸造も司っていたという話があるではないか。そして全てがつながった象徴がリュトンなのです。」・・・と語る太田さん。

ゴブヌ神小
ところで、シンボルマークの元となっているこの木版画は太田さんのコレクションです。

昔、ヨーロッパを旅した時に、いろいろなところで古い木版画を集めていました。これはその中のひとつですが、アルファベットを覚えるためのカード、例えばカルタのようなものではないでしょうか。
ゴブヌ神のもとになったこの木版画は、そのスタイルが男でもなく、女でもなく、神を思わせる中性的な絵だったので、これは使えるな・・・と思い、アレンジしました。
振り返ってみると、GARGERYという具体的な名前が出てきたので、鍛冶職人というストーリが生まれ、ゴブヌ、そしてリュトンにもつながりました。GARGERYというネーミングがなかったら、たぶん訳が分からないことになっていたかもしれませんね。

GARGERYのロゴに込めた思い

GARGERYのロゴはとてもシンプルです。しかし、このシンプルなロゴにこそ、太田さんの思いが込められているのです。

GARGERYロゴ小

ビールのロゴというと、やたらデコラティブだったり、あえてそうすることでヨーロッパ的なイメージを表現したりすることが多いのですが、GARGERYでは、視認性を高め、力強さを表現するためにシンプルにしよう考えました。
ただ、あまりにも日本的になってしまうとビールの本質から離れ、変わり種ビールみたいになってしまうので、そこはビールの原点であることを伝えられるように気を遣いました。

遠くから見ても一目でGARGERYと分かるシンプルさ、それと同居する力強さ、「ビター&スタウト」というGARGERYブランドの中身の出発点ともうまく合っているように思います。

美味しいのが一番

最後に、GARGERYのデザイナーとしてお客様に一番見てもらいたいものは・・・と太田さんにお尋ねしました。その答えは・・・

「まあ、何しろ美味しい。それが一番。そしていろんな飲み方ができる。だからいつでも勧められる。とにかく美味しいということに尽きますよ!」

・・・デザインの話そっちのけで笑顔で締めていただきました。ありがとうございました。

太田さんには、壜商品であるGARGERY23のラベルと王冠のデザインもお願いしています。それらに関するお話も伺ったのですが、またまた長くなってしまいますので、それについてはまた記事を改めて紹介します。

【太田益美(おおたますみ)さん略歴】

武蔵野美術大学工芸工業デザイン科を卒業後、広告代理店などを経てフリーデザイナーに。キリンハートランドビールのイベント(ビアサーカス、ビアジャングル)などに関わる。2001年にデザイン事務所 m+oss を立ち上げ、CIからエディトリアルまで幅広く活躍している。また、造形作家として野外インスタレーション作品を数多く制作。環境芸術学会会員。

・m+ossのホームページ

・環境芸術学会のホームページ

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