Instagramをはじめとして“映え(バエ)”に重きが置かれる昨今、GARGERY専用オリジナルグラスの「リュトン」についてご質問をいただくことが多くなっています。モノとして、それを欲しい、という話が多いのですが、私たちビアスタイル21として、GARGERYとしては、「モノを所有する」ことより、その背景にある「素敵なことに想いを致す」ことを楽しんでいただきたいと思っています。
単独では立てることのできない角杯型のグラス。それを受け止める台座。それら両方がガラス製。これをGARGERYオリジナルの専用グラスとしてお店で使っていただく。それによって、お店でしか飲めない美味しいビールを、お店でしか出逢えない個性豊かなグラスで飲むという、非日常の素敵な時間をお客様に楽しんでいただき、GARGERYブランドを覚えていただく。それが、私たちが「リュトン」に託している願いです。
事業を計画していた頃、新しいビールブランドを成功させるためには、特別なオリジナルグラスが必要だと考えていたものの、いざ具体的にこのデザイン案が出てきた時、こんな形のグラスに、飲食店でビールを提供する容器として実用性があるのか?そもそも作れるのか?ガラス同士でぶつかって割れるのではないか?お客様がグラスを穴に入れそこねてビールをこぼしてしまうのではないか?という不安と疑問が、当然、立ちはだかりました。
その後いくつかのハードルを越えて、多くの飲食店でリュトンを使いGARGERYを提供していただいているわけですが、これを実現できたのは、人の手は、人が考える以上に“優しくて確か”であった、ということだと思っています。
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このリュトンが形を為して、GARGERYとして提供されるまでを追ってみたいと思います。
ガラス職人の手によって、どろどろに融けたガラスの塊が、繊細な人の感覚を頼りに、目指すグラスの形に変わっていきます。
手作りだからこそ、織り込まれた失敗もあります。
そして、リュトンを受け止める台座を作る手。
四角い金型の中に流し込むガラスの量は人の感覚が頼りです。ここぞというところで融けたガラスをハサミで切ります。この時のガラスの量の誤差が台座の穴の深さの誤差になるのです。ガラスの量が多すぎると穴が浅くなり、ガラスの量が少なすぎると穴が深くなります。許容できる誤差はわずか数ミリ(ml)です。
そして、手作りのグラスと手作りの台座それぞれが、飲食店の現場で使用に堪えるものか検査をする手があります。
グラスがぐらつき過ぎたり、穴がきつ過ぎないか、見極めます。ここでもまた、いくつものリュトンや台座が陽の目をみることなく、ガラス原料に逆戻りすることになるのです。
厳しい関門を通り抜けたリュトンと台座が、GARGERYをお取扱いの飲食店に運ばれます。
飲食店でリュトンを扱う手。
一般的なグラスのような脚がなく、円錐形をしたリュトンは、注ぐ時も気をつかいますが、それ以上に洗う時に神経を使います。引っかかりがないので、気を抜くと、つるりと手から滑り抜けてしまいます。繊細な薄いガラスを、 “持つ”というよりも、優しく、でも確かに、“抱く”という感覚です。
リュトンを丁寧に洗い、丁寧にビールを注ぎ、丁寧にお客様の前に運びます。
リュトンに注がれて初めて完成したGARGERYを飲む〝手〟があります。
リュトンを台座の上からゆっくり取り上げ、口元に運びます。
ひとくち飲んだ後、多少酔ってはいても、丁寧に、台座の穴にリュトンを収めます。
私たちは、17年間GARGERYと共にありますが、この穴にリュトンを収め損ねて、ビールをこぼしたり、グラスを割ったりしたという話を聞くことはほとんどありません。想像するよりも、ずっと稀なのです
創る、作る、確かめる、運ぶ、洗う、注ぐ、飲む…。
デザイナーの手により描き出され、ガラス職人の手によって作られ、お店の人の手によりビールが注がれGARGERYとして完成。そして飲み手が手にとる。
数々の〝手〟が、そのGARGERYを存在させています。
そして、それらの〝手〟は、私たちが思っている以上に、ずっと、優しく、確かなのです。
そんなことを、17年の間に何度も再認識させられました。
やさしくて、たしか。
手だけでなく、心もそうありたい。
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こころまでを満たすようなビールを届けたい
外飲みを、もっと楽しく、もっと魅力的にしたい
飲み手の人生に寄り添うような存在でありたい
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