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ガージェリーのコクサイカ

時々「ガージェリーは海外に輸出しないのですか?」というようなことを聞かれます。答は「まったく考えていません。」ということになります。樽商品も瓶商品も、醸造所から飲食店へ冷蔵便で直送することを大事なブランドの約束としているガージェリーですので、コンセプト上・品質上の大きな妥協をするか、もしくは海外の醸造所で新たに委託製造を始めるか、ということになります。前者はあり得ないですし、後者に手をつける前に、国内でやるべきことがまだまだあると思っています。

そういうスタンスではありますが、海外に関連して最近感じていることを、別所の個人的な経験を交えながら書いてみたいと思います。“グローバル”というと大げさな感じがしますので、少し控えめな印象の“国際化”という言葉を使います。その“国際化”のあり方がだいぶ変わってきたなという話です。

変わるビールの“国際化”

1989年からビール会社に勤め始めた私にとって、この30年ほどの“国際化”はこんな感じでした。

1990年代は、海外ブランドビールの輸入、もしくはライセンス生産が主流。アメリカやヨーロッパのビールブランドを日本で販売。バドワイザーやハイネケン、ギネスなどが代表格ですね。その中で日本のビール会社は海外の会社から様々なことを勉強してきました。ちなみに規制緩和で地ビールメーカーが立ち上がり始めたのは1994年です。

2000年代に入ると大手ビールメーカーは海外の会社を買収し海外事業のオーナーになりました。私自身も買収した海外の食品会社に出向した経験がありますが、現地にいて日本側の対応がもどかしかった覚えがあります。日本にいる日本人社員がいつまでも国境にこだわったような対応で、コトが遅々として進まなかったからです。立場を変えて見れば、事業買収の意味を、社員一人ひとりが十分に納得していなかったと言えるかもしれません。こういう状況は10年くらいかかって解消されてきたと思います。買収後に国境を越えて企業文化を一体化させることの難しさを味わった、ほろ苦い経験です。

2010年くらいからはクールジャパンという言葉とともに、今度は日本の商品や文化を海外に売り込もうという気運が出てきました。私は日本に戻り、日本のビールブランドを海外展開する仕事をもらいました。2年半ほど携わっていましたが、日本人としてプライドを持って取り組める、やりがいのある役割でした。それから少し経って、そのビールメーカーを退社することを決めた時期ですが、2014年11月に「世界に伝えたい日本のクラフトビール」というイベントに参加して、若い経営者たちの話を聞いて、こんな感想を持ちました。当時のメモです。

「イベントのタイトルはやや勇み足気味な感じはするものの、それぞれの会社が醸造や販売に関してそれぞれの形で海外とボーダレスにつながっていることが印象的だった。酒類、ビール類の消費量が減ってはいるものの、クラフトビールにとって日本の市場はまだまだ大きい。これまでの感覚なら、日本市場の開拓も途上の小規模な地ビール会社が海外市場にまで手を出すというのは拙速ということになるが、「日本より海外で売る方がやさしい」という言葉も出た。クールジャパンの追い風もあるだろうし、完成度の高い商品は外国でも十二分に魅力的。若い経営者にとって国境はハードルにならず、むしろビジネスチャンスと捉えている。」

クールジャパンと、世界的なクラフトビールブームの流れがあり、大手メーカーのブランドよりもチャンスがありそうだな、と思いました。

ここ日本だけの、飲食店だけの、ガージェリー

さて、変わる“国際化”のクライマックスです。

ここきて、日本の商品を海外に売り込む、輸出するのではなく、日本にある商品・サービスを日本にあるがままに日本で楽しんでもらう、ということが一気に注目を浴びるようになってきました。わざわざここで書くまでもない様々な事象が起こっています。東京オリンピックの後押しも大きいと思いますが、海外からの観光客が日本で、時間、空間、文化を楽しんでいます。爆買いの中国人も、モノより体験を楽しむ人たちが増えてきているようです。

日本の飲食店でしか展開していないガージェリーは、冒頭で書いたとおり、“国際化”という言葉とは縁遠いと思っていました。大手ビールメーカーで海外事業に携わった経験がありますので、自分でもガージェリーの海外展開が頭に浮かぶことはあります。ただ、この際立った商品コンセプトを守ったままの展開は相当難しいですし、コンセプトを妥協して海外展開しても意味はないと思っています。そもそも、正直なところ、そういう余裕は全くありません。

そんな中、ここ数年、ガージェリー取扱店に外国人観光客が訪れて「いったいこのビールはどこのビールだ?すごく美味しい!クールなグラスだ!」と驚いているという話が入って来るようになりました。ガージェリーのお取扱店におじゃますると、そういう話を誇らしげに話していただけます。

そうです。これでいいじゃないですか!

日本の外食をもっと魅力的にしよう。日本に来た海外の人たちをびっくりさせよう。ガージェリーは日本の飲食店でしか飲めないスーパークールなビールってことでいいじゃないですか。輸出する必要はありません。日本には愛すべき飲食店がたくさんあって、その飲食店の皆さんとやるべきことが、まだまだ山ほどあります。

そう思っています。

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こころまで満たすようなビールを届けたい

外飲みを、もっと楽しく、もっと魅力的にしたい

飲み手の人生に寄り添うような存在でありたい

along with your story

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