デザインのイメージは出来上がったリュトン・グラスでしたが、それを実際のモノとして造り上げる過程は、それはそれでまた一苦労でした。
まずは素材の選定。グラス部分は当然硝子なのですが、台座部分を何で造るか。木製、金属製、硝子製といろいろな素材を使って試作しました。
上の写真はその試作品の一部です。素材ごとに、外観、コスト、扱いやすさ、それぞれ一長一短があります。議論の結果、最終的に硝子で造ることになりましたが、グラスと台座が硝子同士の組合せということで、ここからがまた大変。
すり合わせがきつすぎれば硝子同士の嫌な擦れ音が起こり、さらにひどいと固くはまって台座がグラスと一緒に持ち上がってしまいます。また、緩すぎればグラスが傾いてしまい、ビールを入れるどころではありません。
硝子メーカーに量産テストを依頼し、我々も工場に立会いに行きました。
台座は、四角い型に溶けた硝子を流し込み、上から凸型を押し込んでグラスのための穴を開けます。四角い型の容量は決まっているので、最初に流し込む硝子の量が多過ぎれば穴が小さくなって緩くなり、逆に少な過ぎれば穴が深くなってすり合わせがきつくなってしまいます。
硝子職人さんが二人掛かり。一人が溶けた硝子を流し込み、もう一人が目分量で硝子をカットする。そのカットの位置で流れ込む硝子の量、ひいては台座の穴の大きさが決まります。大量生産で機械が使えればよいのですが、なにぶん個数が少なく機械にかけるほどの数量ではないため、どうしても手作業になります。
大変な試行錯誤の結果、何とか実用に耐えるまでに工程が整い、無事リュトン・グラスの誕生となりました。
このリュトン・グラス、現在の台座は実は3代目になります。
初代は、台座側面に「GARGERY」のプラチナプリントが入っていました。この台座は、今でも初期からのお取扱い店で見ることができます。その後、プリントをなくした代わりに、台座の底面に「GARGERY」のロゴとシンボルマーク「ゴブヌ神」のエンボスを入れたものが2代目。さらに、台座の各辺、各コーナーに丸みを帯びさせたものが3代目です。
苦労の甲斐あって、このリュトン・グラスは「GARGERY」というブランド名よりもはるかに認知度が高くなっています。「GARGERY」という名前は知らなくてもこのグラスは見覚えがある・・・そんな方が結構いらっしゃいます。私としては狙い通りでもあり、寂しくもあり・・・ちょっと複雑な気持ちです。
次回のブランド・ストーリーはGARGERYのシンボルマーク「ゴブヌ神」を取り上げます。