皆さんご存じの通り、ガージェリーには樽詰商品「GARGERY」(STOUT、ESTELLA)と、壜詰商品「GARGERY23」(Wheat、BLACK、Xale)があります。容器ごとに呼び分ける場合、私は必ず「樽と壜」という呼び方をしますが、お店などでは「生と壜」と呼び分けられることがあります。「ガージェリーの生」、「ガージェリーの壜」…みたいな感じですね。まあ、意味は通じるし気持ちも分かるのですが、正直言うと釈然としないものを感じているのです。
なぜなら、そこには「樽が本当の生ビール」であり、「本当の生である樽の方が壜よりも美味しい」という潜在的な意識が隠れていると思うからです。
以前、生ビールに関する徹底解説記事を書きました。
>> 「生」だから美味しいのではない – 徹底解説「生ビール」
そこでの主張は、「ビールの美味しさを議論するにあたり、生か、そうでないかは大きな意味を持たない。もっと大切なものがある。」というものでした。今回の話は、それと密接に関係します。とは言っても、要は樽に詰められたビールの呼び方だけの問題です。「生」だろうが「樽」だろうが、呼び方なんぞどちらでもよい…と言われればそれまでなのですが、私のこだわりでもあるので少々お付き合いください。
「樽」=「生」=「美味しい」…という間違った思い込み
まずは、多くの人がイメージするこの図式(樽が本当の生だから壜よりも美味しい)が間違った思い込みであるということをご理解ください。もとより同じ商品名であれば樽でも壜でも同じビールを詰めているのですから、詰めた直後に飲めば、容器の違いによる香味の差はありません。樽と壜の違いは「単に容器が違うだけ」です。
大手メーカーの壜詰商品の場合は、壜詰後すぐにラベルを貼るために多少熱をかけて壜を乾かすという工程がありますが、ガージェリーの場合は常温で壜を乾燥させますので、壜であっても正真正銘「熱処理なし」です。従って、樽だろうが壜だろうが「本当の生」であることに何ら変わりなく、「樽が本当の生だから壜よりも美味しい」…という認識は的外れなのです。
それぞれの商品の特性を最大限に生かすために最適な容器を選んでいるだけのことです
樽商品には樽、壜商品には壜に詰める理由があります
私が一番こだわっているのはご存じの通り「コンディション」です。あえて言えば、生か熱処理か…などというのは些細な問題です。ビールはコンディションの良いものが美味しいのであり、製造工程で熱処理するか否かはビールを飲む時のコンディションの良否とはほとんど関係ありません。
>> ビールの美味しさの原点 – コンディション
そういう信念に基づき、容器に詰めた翌日に、最高に近いコンディションのビールを飲んでいただきたい…という思いをもって最初の商品「GARGERY STOUT」を開発しました。商品ロット、輸送手段、提供スタイル、それらを総合的に勘案した上で最適な容器が樽だったのです。
>> 365日 年中無休 – 年末年始もガージェリーの出荷は続く
一方、ビール販売量がより少ない飲食店でもお取扱いいただくためにはどうしても小さな容器に詰めた商品が必要でした。より小さなロットで、より良いコンディションを保ったままのビールを楽しんでいただくにはどうすればよいか…その答えが壜内熟成であり、容器は必然的に壜になったのです。
>> 壜内熟成 – 壜ビールのコンディションを保つ秘策
「生」偏重のおかしなビール文化を是正しましょう
もうお分かりだと思いますが、樽も壜も「生」なのですから、「生と壜」と呼ぶのはおかしいですよね。樽のGARGERYと壜のGARGERY23を指し示す場合は、是非「樽と壜」と言っていただきたいのです。
どうでもよいこだわり…と思われるかもしれません。
でも、ちょっと大げさに言えば、それが「樽」=「生」=「美味しい」という誤解を解き、「生」を偏重する日本のおかしなビール文化を是正することにつながると思っているのです。