突然、大手4社のビールです。さてさて、各社の主力商品であるこれら4種類のビール。銘柄を隠して飲んで、どれがどれだかきちんと正解できる方、どれくらいいらっしゃるでしょうか?
自信あり・・・と胸を張るあなた、是非挑戦してみてください。
香味ではなくラベルで飲み分けている
ビール好きの多くの方は、「上の4種類を区別するなんて簡単!」と言われると思います。ところが、これ、案外難しいですよ。
銘柄を分からないようにして全く同じグラスに注ぎ、どれがどれだか識別してみてください。4つともきちんと正解したら、プロのテイスターの素質ありです。
普段、ラベルを見ながら飲むと、それぞれ香味が大きく異なるように感じますね。これは、予めラベルを見ることで、自分の経験、外部情報などから、その香味のイメージを頭の中で作り上げるという行為が自動的に行われているからだと思います。つまり、ラベルで飲み分けているという面が非常に強いのです。
もちろん嗜好品ですから、ラベルのデザイン、ブランドのイメージ、ビール自体の外観、そういった全てを含めたものがその商品です。純粋に香味だけを取り出して比較することと、商品の評価は別物だということはしっかりと書いておきます。
大手メーカーは量が売れないと成り立たない
このブログの最初の記事で、日本のビールはつまらない・・・と書きました。どれも似たり寄ったりのピルスナータイプだからです。どうしてこうなっているのでしょう。
大手メーカーもこれまで、様々な個性的なビールを商品化してきました。しかし、そのほとんどは短い期間で市場から姿を消してしまいました。現在残っているものも、ビジネスとして考えると決してうまくいっているものはないと思います。何故か。
ビールというのは薄利多売の安価な商品です。一方工場の建設には莫大な設備投資が必要です。近年、仕込設備やタンクの大きさも巨大になっており、それらをフル稼働させないと利益につながりません。そのためには、少数の商品を大量に生産するのが一番の近道です。従って、量が売れる商品でないと生き残れないのが必然なのです。
量が売れる香味の許容範囲は意外に狭い
日本のビールの歴史はたかだか100年余り、その歴史はピルスナータイプのビールによって作られてきました。そのため、日本人の中には、「ビール」というと「ピルスナータイプ」というイメージが出来上がってしまったのです。もちろん、ピルスナータイプでも苦みが強いビール、あるいはタイプが異なる個性派ビールを好まれる方もいらっしゃるのですが、残念ながら少数派。特に濃色ビールに至っては極少数派となっています。そのため、大手メーカーが市場で量が売れるタイプの香味を求めていくと、非常に狭いレンジの中に収束してしまうのです。その結果が冒頭に書いたどれも似たり寄ったりの主力商品という形で現れます。
スーパードライとラガーの識別が選抜テストに
ビールメーカーはどこでも、商品の官能検査をとても大切にしています。その検査をする人を「パネル」と呼びます。当社のように小さいところでは私しかいないので、いやでも私がやりますが、大手メーカーでは多くの技術者がいます。より官能評価能力が高いパネルをどうやって選ぶか。
一例ですが、4工場で作られたスーパードライ、4工場で作られたラガーを集めます。その8つのビールの銘柄を隠し、ランダムに並べて試飲、受験者がスーパードライ4つとラガー4つに分けるのです。簡単そうに思えるでしょう。でも、これがパネル選抜テストになるのです。ちなみに私、恥ずかしながら全てを正解した記憶がありません。
全く違う香味と思われるスーパードライとラガーにしてこれですから、いかに狭いレンジに商品がひしめいているか、想像していただけると思います。
簡単にできるトライアングルテストに挑戦!
もう一つ、比較的簡単にできるテストを紹介しましょう。何でもよいので、識別してみたい2種類のビール(仮にA、Bとします)と、3つの同じグラスを用意してください。3つのグラスのうち1つにAかBのビールを入れます。残りの2つのグラスにもう一方のビールを入れます。
- 3つのうち、どの1つが異なるビールかを当ててください。
- そして、その1つがAかBかを当ててください。
これをトライアングルテストと言います。以前、日本バーテンダー協会(NBA)の某支部の研究会にお招きいただき、一番搾りとスーパードライを使って、プロのバーテンダーの皆さんにこのテストを経験していただいたことがあります。正解率は・・・50%に届かなかった記憶があります。
飲み会の余興に試されてみてはいかがでしょうか。
新しいビール文化を創りましょう
先ほども引用したこのブログの最初の記事で、日本のビール文化を変えていきたい・・・と書きました。ピルスナー一辺倒ではない新しいビール文化を皆さんと共に創っていきたい。それがGARGERYの願いです。まずは騙されたと思っていろいろなビールにチャレンジしてください。そして少しでも美味しいと感じるビールがあったら、それを飲み続けてみてください。そうすることで少しずつビールの世界が広がってくると思います。そんな小さなことが100年後の新しいビール文化につながるかもしれません。その中心にGARGERYがいられたら幸せです。