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【from BrewMaster】 想いを閉じ込めるプレミアム

前回、樽詰ガージェリーの長期熟成、毎日樽詰というプレミアムについて書きました。

当初は樽詰だからこそのプレミアムを謳ってスタートしたガージェリーが、どう考えて瓶詰を発売したのか、今回は、瓶詰ガージェリーのプレミアムについて書いてみます。

樽と同じ志、異なる道のり

GARGERYブランドの品質上の一番のこだわりは、最高のコンディションのビールをお届けする…というものです。何故なら、コンディションの良さこそ、美味しさの要と考えているからです。

ビールのコンディション劣化の大きな原因の一つが酸化です。工場のタンクから樽や瓶、缶といった容器に詰める際、どれだけ工夫、努力しても一定量の酸素を取り込んでしまうことは避けられません。大手ビールメーカーに比べて設備能力が劣る小さな醸造所ではなおさらです。そして、この酸素による酸化が、コンディションの劣化、つまり美味しさを損なう原因となるのです。毎日樽詰めし、翌日にはお店にお届けするというのは、コンディションの良さを維持するためにはスピードで勝負するのが一番と考えているからです。そのため、当初は、日々1本単位での詰めが可能な樽に限ってきました。一方、容量が小さい瓶の場合、ご注文本数だけ日々瓶詰するという、樽と同様の対応はさすがにできませんでした。

しかし飲食店から、より扱いやすい瓶商品をガージェリーに期待する声を多くいただき、我々としてもお取扱店の広がりがより期待できる瓶詰の商品を出したい…そういう思いで瓶商品の開発に取り組んだのです。

前述のとおり、毎日瓶詰めできないからと言って、予め瓶詰めしてしまっては、樽で築き上げてきたコンディションの良さというGARGERYのこだわりを否定してしまうことになります。毎日樽詰、翌日お届けという、スピードに頼った方法以外で酸化劣化を防ぐためにはどうすればよいか…

「主発酵終了直後の即瓶詰め」と「瓶内熟成」

言うだけならば簡単なことですが、要は、瓶の中の酸素を無くしてしまえばよいのです。ここで重要な役割を果たすのが酵母です。

ビールと共に瓶内に生きた酵母を閉じ込め、その呼吸によって瓶の中に入り込んだ酸素を消費してくれることに期待しました。最近は個包装のお菓子にエージレス等の脱酸素剤が入っていることがごく普通になっていますが、それと同じこと。瓶詰後に無用の酸素を取り除く役目を酵母に託したのです。

瓶詰のガージェリーでは、主発酵が終わったばかりの、まだ大量に酵母が残っている若ビールをそのまま瓶に詰めてしまいます。そして、その状態で最低でも2ヶ月程度、冷蔵保管します。工場の熟成タンクで起こっていることを瓶の中で行っているわけです。そして、所定期間が経過した後、出荷を開始します。実際飲んでみると、瓶詰後2ヶ月経っても、酸化に伴う嫌な香味を感じることは全くと言ってよいほどありません。

さらに、一定の熟成が進んで出荷した後も、酵母はさらに長期に渡ってゆっくりと代謝活動を営みますから、ビールの香味は少しずつ変化していきますが、これを劣化ではなく熟成と考えるわけです。酸化劣化を防ぎ、長期保存による香味の変化も楽しんでもらえる、まさに一石二鳥の解決策だろうと考えています。これを「瓶内熟成」と称しています。

理屈に経験と創造力を加える

さて、コンディションの良さは瓶内熟成で確保することにしましたが、瓶詰ガージェリーは長期熟成を前提とした、樽のスタウトやエステラとは異なるレシピづくりをしています。まずは、「瓶内熟成に適した液種って何だろう?」というところから始まり、試醸の段階で得た「瓶詰後に長期熟成をさせる場合、ホップの使用量は少ない方がよさそう…」という感触、「当然ながら濃いビールの方が良さそうだな…」という身に沁みついた感覚…、経験と創造力をフルに働かせてつくり上げたのが、最初の瓶詰ガージェリー「Wheat」でした。

最近、このWheatを10年近く超長期熟成させたものを飲んでみましたが、ビールは驚くほどの透明感を保っていますし、香味も「熟成」と呼ぶにふさわしい変化を遂げ、様々な目論見は予想以上にうまいこといったかな…と感じています。

発酵と腐敗は紙一重ですが、熟成と劣化も背中合わせです。この境界を、理屈と経験と創造力でコントロールする。

醸造家の醍醐味です。

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こころまで満たすようなビールを届けたい

外飲みを、もっと楽しく、もっと魅力的にしたい

飲み手の人生に寄り添うような存在でありたい

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