GARGERY専用オリジナルグラスの「リュトン」について、このグラスがブランドとしての大事な要素であること、デザインに込めた意味や想いについて、これまでの投稿で何度か書いてきましたが、今回は少し違った切り口のストーリーです。
単独では立てることのできない角杯型のグラス。それを受け止める台座。それら両方がガラス製。これをGARGERYオリジナルの専用グラスとしてお店で使っていただく。それにより、お店でしか飲めない美味しいビールを、お店でしか出逢えない個性豊かなグラスで飲むという、非日常の素敵な時間をお客様に楽しんでいただき、GARGERYブランドを覚えていただく。
事業を計画していた頃、そう頭に描いたものの、こんな形のグラスが、飲食店でビールを提供する容器として実用性があるのか?そもそも作れるのか?ガラス同士でぶつかって割れるんじゃないか?お客様がこぼしまくってしまうんじゃないか?などという不安と疑問は当然ありました。
その後いくつものハードルを越えて、今では多くの飲食店でリュトンを使いGARGERYを提供していただいているわけですが、これを実現できたのは、結局のところ、人の〝手〟って素晴らしい、ということではないかと思います。
ガラス職人の〝手〟によって、どろどろに融けたガラスの塊が、繊細な人の感覚を頼りに、目指すグラスの形に変わっていきます。
人の〝手〟ですから当然失敗もある。それは織り込んで作っています。
リュトンを受け止める台座を作る〝手〟。
四角い金型の中に流し込むガラスの量は人の感覚が頼り。ここぞというところで融けたガラスをハサミで切ります。この時のガラスの量の誤差が台座の穴の深さの誤差になるのです。ガラスの量が多すぎると穴が浅くなり、ガラスの量が少なすぎると穴が深くなります。許容できる誤差はわずか数ml。
そして、手作りのグラスと手作りの台座それぞれが、飲食店の現場で使用に堪えるものか、最後に厳密に検査をする〝手〟があります。
グラスがぐらつきすぎたり、穴がきつすぎないかなど、きっちり見極めます。ここでも、いくつものリュトンが陽の目をみることなく、ガラス原料に逆戻りすることになるのです。
厳しい関門を通り抜けたリュトンが、GARGERYをお取扱いの飲食店に運ばれます。
醸造所から直送されてきたGARGERYを、そのリュトンに注ぐ〝手〟があります。
繊細なリュトンを丁寧に洗い、丁寧にビールを注ぎ、丁寧にお客様の前に運びます。
リュトンに注がれて初めて完成した「GARGERY」を飲む〝手〟があります。
リュトンを台座の上からゆっくり取り上げ、口元に運びます。
ひとくち飲んだ後、多少酔ってはいても、丁寧に、台座の穴にリュトンを収めます。
私たちは、12年間GARGERYをやってきましたが、この穴にリュトンを収め損ねて、ビールをこぼしたり、グラスを割ったりしたという話は聞いたことがありません。これは本当です。もしかすると、どこかでそういうことはあったかもしれませんが、それほど稀だということです。
なにか奇跡的なことのように思います。
こぼさない、ってことではなく、
デザイナーの〝手〟により描き出され、ガラス職人の〝手〟によって作られ、お店の人の〝手〟によりビールが注がれ「GARGERY」として完成。そして飲み手が大切にそれを〝手〟にとる。
もちろん、ここに書いた以外にも、工場からビアスタイル21社の事務所やお店へグラスを運ぶ〝手〟もあります。大事に運んでいただいたからこそ、割れずにお店に存在するわけです。
数々の〝手〟が、そのGARGERYを存在させています。
人をつないで、人につながれて、その1杯があります。
GARGERYが一番大切にしたい気持ちです。
こころまでを満たすようなビールを届けたい
外飲みを、もっと楽しく、もっと魅力的にしたい
飲み手の人生に寄り添うような存在でありたい
along with your story