昨年から今年にかけて公開した「読む工場見学会」とも呼ぶべき記事で、プレミアムビール「ガージェリー」の製造工程を一通り紹介してきました。
これまでの記事はこちら>> プレミアムビールができるまで
これまで紹介してきた設備は、小規模醸造所(いわゆる地ビールメーカー)としては比較的大きな設備なので、商品規模がまだ小さい壜のGARGERY23では持て余してしまいます。できるだけ商品規模に見合った設備で醸造した方が品質が安定しますから、GARGERY23はより小規模な設備で醸造しています。今回は、GARGERY23の醸造設備を紹介しましょう。
その前に、
ビールの仕込設備、その工程を簡単におさらいしておきます。
マッシュケトル(糖化釜):粉砕したモルトの澱粉を糖に変える糖化工程を行います。
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ロイター(麦汁濾過機):糖化が終わった麦汁を濾過してモルト粕を除去します。
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ウォルトパン(麦汁煮沸釜):濾過された麦汁にホップを加えて煮沸します。
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ワールプールタンク(沈殿槽):煮沸後の麦汁からホップ粕等の固形分を除去します。
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ウォルトクーラー(麦汁冷却器):麦汁を冷却し、その後酵母を添加して発酵を開始します。
GARGERY23御用達の醸造設備
ガージェリーの製造委託先であるエチゴビール社には醸造設備が2ラインあります。1ラインがこれまで紹介してきた1仕込8KL規模のもの、そしてもう1ラインはそれよりも小さい1仕込1KL規模のものです。この小さい方の設備は、1994年にエチゴビール社が操業を開始した際に導入された初代の設備であり、以来20年近くに渡って現役で活躍しているのです。GARGERY23はこの1KLの設備を使って醸造されています。
この写真が仕込設備の全景です。8KLの仕込設備に比べるとずいぶん小ぶりでシンプルですね。外装は化粧用の銅板でさすがに20年近い古さを感じさせますが、内部はステンレス製で、もちろんピカピカです。
機能を兼用してシンプルに
8KLの仕込設備は4つの仕込容器から成り立っていましたが、こちらの1KLの設備は複数機能を兼用した2つの仕込容器に集約されています。
向かって左側がマッシュケトル(糖化釜)とロイター(麦汁濾過機)の兼用、右側がウォルトパン(麦汁煮沸釜)とワールプールタンク(沈殿槽)の兼用です。
左側の容器の内部はご覧の通り。容器の底にはロイターとして使う際に必要となるスリットの入った底板が敷き詰められています。撹拌羽は、マッシュケトルとして使う場合の撹拌用、ロイターとして使う場合のモルト粕排出用という2つの役割を持っています。
麦汁濾過時の様子が容器側面のサイトグラスから見ることができます。沈殿して濾過層となっているモルト粕、その上にある麦汁がよく分かると思います。
右側の容器は内部もシンプルな釜で、底部外側に加熱用の蒸気ジャケットが備わっています。下の写真は、ロイターで濾過された麦汁が着々と釜の中に溜まり始めているところです。
煮沸終了後は移し替えることなく、ポンプで内部の麦汁を循環させて渦流を起こし、ワールプールの機能を持たせます。その後、二つの容器の間の基部に備えられたウォルトクーラー(麦汁冷却器)で冷やして、発酵準備が完了となります。
発酵・熟成タンクも兼用です
この仕込設備に対応した発酵・熟成タンクも小さいサイズです。各タンクの容量は1KL、つまり1仕込でタンク1本ということになります。さらに、このタンクは発酵と熟成を兼用しており、ビールの出来上がりまでタンク1本で済ませてしまいます。ただ、壜内熟成ビールであるGARGERY23の場合、発酵終了後はタンクでは熟成させずに壜に詰めてしまいますからあまり関係ありません。
>> 壜内熟成 – 壜ビールのコンディションを保つ秘策
さて、いかがでしたか。ガージェリーは、大小2種類の醸造設備を使い分け、それぞれの商品規模、商品特性に応じた製造を行っています。
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