シリーズ「プレミアムビールができるまで」…7回目の今回は、お茶の写真からスタートです。この写真、湯呑みに入った茶葉を撮っているのですが分かりますか?
湯呑みの底の梅の絵が邪魔していますが、黒い粒のように見えるのが茶葉です。
上段の写真は湯呑みの中をかき混ぜた状態で、茶葉が回っています。しばし後の写真が下段。回っていた茶葉が湯呑みの底、中心部に近いところに集まっています。皆さんも経験があると思いますが、液体を回転させると固形物は中央部に集まって沈殿します。これが今回紹介するの工程の一つ、ワールプールタンクの秘密です。
前回の記事「ホップと麦汁はお熱いのがお好き – 大迫力の麦汁煮沸」で、ビールの前身となる麦汁が出来上がりました。いよいよこれに酵母を加えて発酵させるのですが、その前に…
- 麦汁の中にはホップ粕や煮沸中に不溶化したタンパク等が固形分として残っているので、これを取り除かなければなりません。
- 麦汁が熱いままでは添加した酵母がたちまち死んでしまいますから、酵母が気持ちよく感じる温度まで冷やさなければなりません。
自然の力でホップ粕を除去 – ワールプールタンク
この写真がワールプールタンクの内部を上から覗いたところです。これまで紹介した各設備に比べてとてもシンプルですね。唯一の特徴が写真中央左側に見える飛び出した配管。ここから、煮沸が終わった麦汁がタンクの縁に沿って噴き出すように導入されます。つまり、湯呑みの中で回転する液体の状態を作り出すわけです。
ワールプールタンクに麦汁が入りつつある状態が下の写真。ちょっと分かりにくいですが、写真右端の方で麦汁の液面が回転しているのが見えます。この後しばらく放置することで、ホップ粕などがタンク底の中心部に集まって沈殿します。こうして、ビールには不要な固形分とビールの前身となる麦汁が自然の力で分離されるのです。
酵母は冷たいのがお好き – 麦汁冷却
ワ―ルプールタンクで麦汁が液体だけになったら、100℃近い温度を保っている麦汁を一気に冷やします。冷やす温度はビールのタイプによって異なりますが、ガージェリーの場合は17℃がターゲット。その温度が、酵母にとって心地よい温度なのです。
下の写真が麦汁冷却機です。
右上の部分を拡大したのが下の写真。よく見ると薄いステンレスの板が何十枚も重なっています。この一枚一枚のステンレス板の間に、麦汁と冷媒が交互に流れるようになっており、熱い麦汁を一気に冷やすことができます。
麦汁を冷やした後は、この後で添加される酵母のために空気(酸素)を吹き込みます。酵母が発酵のスタートダッシュを決めるためには呼吸が必要で、そのための酸素が必須なのです。とは言っても、麦汁やビールに酸素を触れさせるのはこれが最初で最後。以降は、酸素はビール品質を劣化させる邪魔者でしかありません。
>> 「なぜビールの味は落ちるのか – 酸化が大敵」
これで、いわゆる仕込工程は終了し、発酵の準備が整いました。次回は発酵の主役「酵母」の登場です。