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ホップと麦汁はお熱いのがお好き – 大迫力の麦汁煮沸

「ビールを沸かすんですか? だって生ビールって言うじゃない…」
大丈夫、ここではまだビールではなく麦汁です。生ビールかどうかとは別問題。メーカーやブランドを問わず、ビール造りには煮沸工程があります。

前回の記事「一番搾りと二番搾り – 麦汁濾過」で、ビールの前身となる麦汁が濾過されてきましたが、煮沸工程でいよいよホップの登場です。
麦汁を煮沸する主たる目的は「ホップと出会うため」だと考えてください。他にも目的はいろいろとあるのですが、細かく書くとキリがないので。

さて下の写真です。ガラス越しで少々ぼやけていますが、一体何が起こっているのでしょうか。何やら噴き上がっていますが、これが煮沸中の麦汁です。中央に見える円盤にあたって噴水状態になってます。大迫力の麦汁煮沸です。

麦汁を煮沸するための設備がウォルトパン(麦汁煮沸釜)です。外観は下の写真。例によって変わり映えのしない形ですが、容器上部に太い排気管が付いているのが目を引きます。これはいわゆる煙突です。

では中をのぞいてみましょう。中央に練炭を思わせるような筒状の装置が付いています。これが加熱装置でローレンコッファー(多管式熱交換器)といいます。練炭の穴の部分は麦汁が通ります。そしてその回り部分に加熱された蒸気が通り、麦汁を煮沸するのです。煮沸が始まると、穴の部分で加熱された麦汁が噴き上がり、最初の写真に見られる噴水状態になるというわけです。

いよいよホップが登場

ビールと言えばホップ!
ホップのないビールは、イチゴのないショートケーキのようなもの(笑)。

前述の通り、麦汁を煮沸する重要な目的の一つが、ホップを加え、その苦味、香りの成分を麦汁に付与することです。ホップを麦汁と共に煮沸することで、ホップのルプリンに含まれるフムロンという化学物質がイソフムロンへと形を変え、これがまさにビールの苦味成分となるのです。

ホップの苦味付けと香り付け

ホップは通常、何回かに分けて投入されます。樽のガージェリー・スタウト、エステラの場合は2回に分けます。1回目は麦汁煮沸を開始する時、そして2回目は煮沸が終了する15分前、あるいは5分前です。2回目に投入するホップは煮沸される時間が短く、その香りを麦汁に残すことを目的とします。そのため、苦味よりも香り成分を重視するアロマホップを使います。
一方、苦味成分が多いビターホップのみを使っているガージェリー23では、煮沸開始時の1回にまとめて投入してしまいます。
そのあたりはこちらの記事を>> GARGERYの新しい一歩 – GARGERY23 Wheat

麦汁の完成

煮沸時間は90分間。この時間で約10%の水分が飛んでいき、いよいよ麦汁の完成です。激しい煮沸が繰り広げられたウォルトパンの中も、煮沸が終わればご覧の通り、落ち着きを取り戻します。マンホールの口の内側に付着した粕だけが煮沸の激しさを物語っています。しかし麦汁には大きな変化があります。煮沸前は甘かった麦汁が、この段階ではしっかりとした苦味とホップの香りが付いているのです。

煮沸が終われば仕込終了までもう一息。次回は、ホップ粕や煮沸で生じた固形分をワールプールタンクで取り除き、麦汁を冷却する工程へと進みます。

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