時々お客様から、瓶のGARGERY23の中味を樽に詰めたのが、ガージェリー・スタウトとガージェリー・エステラなのかという質問をいただくことがあります。多くのビール会社は同じ中味のビールで瓶商品と樽商品をラインナップしているので、無理からぬことではあります。ただ、醸造所でタンクから容器に詰めた後の時間と環境についてこだわりを持ったガージェリーは、瓶商品と樽商品の中味を敢えて変えています。いや、変えているというよりは根本的に成り立ちが異なる商品なのです。
樽ではなく、瓶である理由がある
2002年に樽詰のガージェリー・スタウトだけでスタートしたGARGERYブランドは、2009年に瓶詰のガージェリー23を発売するまでは、製造直後の美味しさをお届けするために頑なに樽商品にこだわっていました。10L樽のみのビールとしてお店に紹介して回っていました。
当然「瓶はないの?」という質問をよくいただくことになります。樽商品は様々な理由で取扱いが難しいけれど、瓶ならば入れてみたいというお店は少なくありません。だから、瓶に詰めさえすれば、GARGERYの取扱店が大きく増えることはわかっていました。しかし、樽の中味をそのまま瓶に詰めることだけはできない、しない。何故なら、樽に詰めた翌日に冷蔵便でお店に届くことを約束するという、他に例をみないレベルでコンディションにこだわり、樽詰商品として上市したGARGERYのポリシーを否定してしまうからです。毎日、注文いただいた数だけ瓶詰めして出荷するというのは、製造効率的にあり得ない。ならばと、導き出したのが「瓶内熟成」でした。
瓶商品には瓶商品であることの理由をきちんと求めたのです。
熟成タンクとしての瓶
通常のビールは、瓶でも缶でも、そして樽でも、程度の差はあれ容器に詰めたときから酸化が始まります。これは香味の劣化を意味します。この酸化を防ぐ手段は二つ。
容器内に酸素を入れない。
容器内の酸素を除去する。
このうち、容器内に酸素を入れずに詰めることは事実上不可能ですので、残された手段は2番目の「容器内の酸素を除去する」しかありません。そのために、酵母の力を借りることにしました。酵母も一緒に瓶詰する。酵母には強い還元力があります。呼吸で酸素を消費すると考えていただくと分かりやすいと思います。生きた酵母が瓶内にあることで、多少の酸素は酵母によって消費され、その酸素によって起こる酸化が抑制されるわけです。
酵母をビールと共に瓶に詰めるということになると、その環境は熟成タンクと同じことになります。熟成タンクに移す前の酵母濃度が高い時期に瓶に詰めてしまい、瓶の中で熟成をさせます。GARGERYの樽商品は非常に長い熟成期間を確保していますが、これを熟成タンク内ではなく瓶内で行おうと考えたのです。その結果誕生したのが、賞味期限表示3年という瓶ビール「GARGERY23」です。
信条を貫くために、在り方を変える
樽詰のガージェリーは、スタウトは100日以上、エステラは60日以上かけてタンク内で発酵・熟成し、いざ出荷しお店へ届けば、早々に消費されることを前提としています。一方、GARGERY23は、瓶詰の後60日以上熟成させてからお店へお届けし、さらに1年、2年と熟成させる可能性も含めて商品設計をしています。
このように、製造プロセスも出荷後の扱われ方も違いますので、樽詰商品をそのまま瓶に詰めるのではなく、瓶内熟成に合ったレシピを開発するというのは極めて自然な考え方だと思います。
具体的に、樽詰のガージェリー・スタウトと瓶詰のガージェリー23ブラックを比べてみます。どちらもスタウトビールですが、瓶は樽よりも長期間保存される、つまり、より長く熟成される可能性が高いと考えたため、ホップの使い方を変えています。ガージェリー・スタウトにはアロマタイプと呼ばれる香り重視のホップを中心に使っています。しかし、瓶詰のガージェリー23ブラックでは、苦味重視のビタータイプのホップを100%使用しています。ホップの使用量が多いと、長期瓶内熟成する間に、意図しない余計な香味の変化が起こりやすくなると考えたからです。そのため、同じ苦味を付ける際に使用量を減らせるビタータイプのホップを選んでいるのです。だから、2つのビールは、ホップが違い容器に詰めるタイミングも違う、異なるスタウトビールなのです。
樽のガージェリー・スタウトとガージェリー・エステラ、瓶のガージェリー23ウィート、エックスエール、ブラック。2種の容器はそれぞれ独自のこだわりを持っています。ただ、お客様が召し上がる瞬間のビールのコンディションに思いを致しているという意味では、全く同じ、ひとつの信条のもとに創られ、造られています。
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