昨年12月の記事で、「泡が出ない」というトラブルの原因を解説しました。
>> サーバートラブル – 泡が出ない
今回はその逆、「泡が多い」トラブルです。「泡が多い」というのは、樽詰ビールのトラブルの中でも特に事例が多く、言ってみれば最もポピュラーなトラブルです。一方で、原因は分かりやすく、一度理解してもらえれば、泡の多さに頭を悩まし、イライラする必要はなくなります。
炭酸ガス圧が高過ぎて泡だらけ
泡が多い場合、最も可能性が高い原因がこれです。樽詰ビールにかける炭酸ガスの圧力(減圧弁の設定圧力)が樽の温度に比べて高過ぎて、ビールの炭酸ガス含量が高くなり、注いだ時に泡だらけになってしまうという現象です。ビールの適度な泡立ちは、炭酸ガス含量が適切に保たれていることが必須条件です。以前の記事でも解説した通り、適切な炭酸ガス含量はビール温度と炭酸ガス圧力の適切なバランスによって保たれますから、炭酸ガス圧力が温度に比べて高過ぎると炭酸ガスがビールに溶け込み過ぎてしまうのです。
! ビールが泡だらけになったら、減圧弁の圧力設定を確認してください。
例えば、注出のスピードを速めるために必要以上に高い炭酸ガス圧力に設定すると、泡が多くなり易くなります。また、営業時間外に樽を冷蔵保管するのは品質保持のための極めて効果的な手段ですが、この場合は常温の時よりも炭酸ガス圧を低くする必要があります。常温時と同じ圧力で注出した後、そのまま冷蔵庫に入れてしまうと、翌日は泡だらけになってしまいます。いずれのケースでも、樽内のビール残量が少なくなった時に顕著に影響が出ます。平衡圧グラフを参考に、適切な炭酸ガス圧力設定をしましょう。
詳細については、以下のブログ記事を参考にしてください。
>> 炭酸ガスを制する者、ビールの泡を制す
ビールが冷えなくて泡だらけ
もう一つの良くあるケースは、ビールサーバーでのビールの冷えが悪いために泡だらけになってしまう…という現象です。これは、サーバー内にきちんと氷ができていない場合に起こります。
! 減圧弁の設定に問題がないのに泡だらけになる場合は、サーバーの蓋を開けて内部の着氷状態を確認してください。
下の写真は氷ができていないサーバー内の様子です。正常時には、銅色のパイプの周りに厚さ数センチで着氷しますので、手を入れてみるとすぐに分かります。
着氷しなくなる一番の原因はサーバーのフィルターの汚れ、目詰まりです。エアコンのフィルターが汚れると冷えが悪くなるのと同じことですね。下の写真はあるお店の実例… こうなると間違いなく氷はできず、ビールは冷えず、泡だらけとなります。すぐにフィルターを洗浄してください。
フィルターを見ても目立った汚れがない場合は、氷を作るための冷凍機のON/OFFを担うフロートレススイッチやパワーリレーの故障、水が古くなったことによる電導度の低下といった原因が考えられます。これらの場合には、部品交換や水槽の水交換といった作業が必要になりますのでご一報ください。
樽詰ビールが泡だらけになったらこの記事を思い出してください。炭酸ガスを制する者、ビールの泡を制す… 必ず解決します。