前回の記事で、ビールサーバーの注ぎ口からビールと泡が切り替わって出てくる仕組みを解説しました。
>> ビールが出たり、泡が出たり – ビールサーバー注ぎ口の秘密(新タイプ編)
ところで、ガージェリーが使っているニットク社のビールサーバーの注ぎ口には2つのタイプがあります。前回の記事をご覧になって、「あれっ、うちの注ぎ口の形は違うぞ…」と気付かれたお取扱い店の方もいらっしゃるのではないかと思います。
下の写真をご覧ください。左側が前回解説した新タイプで、注ぎ口にビール用と泡用の2つのラインがあります。右側がもう一つのタイプで、こちらは旧タイプ。見て分かるように注ぎ口が1ラインだけです。この1ラインからビールも泡も出てくるのですが、さて、その仕組みはどうなっているのでしょう。
旧タイプの弁棒を分解してみよう
早速ですが、旧タイプの弁棒を分解してみます。このタイプの分解は、①を回すためのマイナスドライバーさえあればOKで、ご覧の通り4つのパーツに分かれます。新タイプより一つ少なく、ちょっとだけシンプルです。
この弁棒では、①と④がネジで固定されています。②と③はその間に挟まり、①は③の中に入り込む大きさです。①の左側正面から見ると下の写真の通りで、新タイプ同様、①の先端には泡ラインの穴が開いています。そして、④の左寄り、③の黒いパッキンに隠れる部分にポチッと泡ラインの出口の穴が開いています。この穴よりも右側、④の軸の部分には穴は貫通していません。つまり、①から③までが泡出しの時にビールが通過する泡ラインですね。
ビールと泡の切替の仕組みを見てみよう
弁棒の動きを解説しながらビールラインと泡ラインの切替えを見てみます。
ハンドルを手前に引く(写真では右に倒す)と弁棒全体が左へ動き、③のパッキンとタップ本体内部の間に隙間ができてビールが流れます。これがビールを注いでいる状態。次に、ハンドルを奥へ押し込む(写真では左へ倒す)と、③はタップ本体に引っ掛かってビールラインを閉ざしたまま動きませんが、④と①が右へ動き、④に開いている泡ライン出口の小さな穴が③の陰から現れます。つまり泡ラインが開通するのです。①の先端の穴から細い泡ラインを勢いよく通過したビールが一気に開放されることで泡になって出てきます。
このタイプは、④の軸の中に泡ラインがありませんので、ビールの時も泡の時も出てくる場所は③の右側付近で同じです。③の外側を通るか、泡ラインの中を通るかの違いだけ。従って、タップも1ラインだけ。この仕組み、分かりますか?
新タイプの方がよりきめ細かい泡が実現
ここからは、新タイプと旧タイプの違いになります。新旧2つの弁棒を見比べてください。お気付きだと思いますが、一番の違いは弁棒に仕組まれた泡ラインの長さなのです。
上の新タイプは中央部の軸の中にも泡ラインが通っているのに対し、下の旧タイプは左側の頭の部分にしか泡ラインが通っていません。新タイプでは泡ラインが長い分、出てくる泡がよりきめ細かくなるというメリットがあるのです。
しかし一方で、泡ラインが長いため異物が詰まりやすく、特に無濾過のガージェリーのようなビールでは、モルトやホップの粕が泡ラインに詰まり、泡が全く出なくなるというトラブルが起こりやすくなります。決して良いことばかりではないのです。この辺りはまた記事を改めて紹介します。
次回は、樽からビールを取り出す器具「ディスペンスヘッド」について紹介します。