前回の記事で、ビールサーバーの中でビールが瞬間的に冷えて出てくる仕組みを解説しました。
>> ビールサーバーの仕組みを解説 – サーバーを制する者は樽詰ビールを制す
今回はその先、冷えたビールが出てくる部分の仕組みを紹介します。一度でもビールサーバーを使ったことがある方ならばご存じだと思いますが、注ぎ口(「タップ」と呼びます)のハンドルを手前に引くとビールが、奥に押すと泡がでてきます。不思議ですねぇ…
さて、どういう仕組みになっているのでしょうか。
タップには、メーカーの違いや新旧の違いによっていくつかのタイプがありますが、ガージェリーではビールサーバーも含めてニットク社のものを使っています。まずは、同社の新タイプを取り上げて解説しましょう。
タップを分解してみよう
タップをサーバー本体から外してじっくりと眺めてみます。まず、出口の部分を見てください。穴が二つあるのが分かりますね。写真で見て、手前がビールの出口、奥が泡の出口になります。
反対側(サーバー本体側)を見てみます。中央にステンレスの丸い部品が見えます。中央には小さな穴が開いています。このステンレス部品の周囲とタップ本体の間の隙間が普通にビールを注ぐ時の通り道、中央の小さな穴が泡を出す時の通り道になります。両方同時に通ることはありません。
分解するとご覧の通り、簡単に3つに分かれます。タップ本体、ハンドル、そしてステンレス製の「弁棒」と呼んでいる部品です。一番の秘密は、この弁棒の中に隠れています。
弁棒の仕組みが分かれば百人力
弁棒をさらに分解してみます。マイナスドライバーとプライヤーがあれば簡単に分解できます。ご覧の通り、①~⑤までの5つのパーツに分かれます。
①、及び②の左半分の軸の中心部には細い小さな穴が貫通しています。写真で「泡ライン」と書いた部分です。下左の写真が①を右側から覗いたところ、下右の写真が②を右側から覗いたところです。この細い通路が泡が出てくる秘密なのです。
ハンドルと弁棒の動きを理解しよう
弁棒はタップ本体内に入っているのですが、分かりやすくするために本体の上に置いて写真を撮りました。この写真を見ながら、ハンドルと弁棒の動きを理解しましょう。
ハンドルが正立している状態ではビールが止まっています。①の右側についている黒いパッキンがタップ本体内側と接しているためです。また、泡ラインは、②の中に入りこんだ③が④のスプリングで押さえられて泡ライン出口をふさいでいます。
ハンドルを手前に引く(写真では右に倒す)と、ハンドル取付け部が支点になってハンドル下部先端は左へ動きます。このハンドル下部先端は②と③の穴にはまっていますから、タップ本体内の弁棒全体が左へ動き、①のパッキンとタップ本体が離れてビールが流れます。これがビールを注いでいる状態です。
逆に、ハンドルを奥に押し込む(写真では左に倒す)と、①のパッキンが引っ掛かっているため弁棒本体(①、②、⑤)は動かず、ビールを注ぐ時の通路はふさがったままですが、③が④のスプリングを押して右へ動き、②と③の隙間が開いて泡ラインが開通します。細い通路を勢いよく流れてきたビールが一気に開放されるため、泡となって出てくるのです。
さて、いかがでしたか。ビールと泡が切り替わる仕組みがお分かりいただけたでしょうか?
ここまで細かく解説してしまいましたので、次回はニットク社の旧タイプのタップを取り上げ、新旧の違いを紹介します。