GARGERYが似合う大人の女性アーティストにスポットを当て、リュトンを片手に、思い思いのストーリーを語っていただいています。日暮里のBar PORTOでミュージシャンのNoriko Suzukiさんにお会いしました。
―こんにちは!まずは、Norikoさんの音楽活動についてお聞かせください。
「ライブをメインに活動しているシンガー、という感じでしょうか。実は子育てに重点を置いていた期間はあまり音楽活動をしていなくて、7年前に夫でジャズギタリストの津村和彦が亡くなったのをきっかけに、夫の周りのミュージシャンや活動の場の皆さんに力添えいただきながら現在の音楽活動に復帰して今に至る、って感じです。」
「2年前、コロナが始まった頃に一念発起して20年ぶりのアルバム制作をしていたこともあって、ジャンルと文化を越境する音楽をお届けするプロダクション、Be-Spell Production なるものを立ち上げたのですが、今ひとつこれがちゃんと機能しているかというと自分でもよくわかりません(笑)やらねばならぬ… という状況ゆえに足を突っ込んだプロデュース業でしたが、全くもって向いてない… ということがわかったというところです。。。 残念ながら歌しか歌えなかったみたいです(笑)。」
「日頃は、ジャンルで言うならばジャズミュージシャンと一緒に演奏することが多いので、演奏している場所も都内や横浜中心のジャズライブハウスなどが多いです。でも、元々スタンダードばかりを歌うジャズシンガーという感じではなかったところに輪をかけて、最近ではブラジル音楽からクラッシック、オリジナルまで、様々な言語で世界の魅力的な音楽を歌っている感じです。少し前まではラジオのDJもやらせていただいていました。」
「先ほど、20年ぶりにアルバム制作をしていたと言いましたが、そのアルバムがコロナ禍に発売されました。「存在の耐えられない軽さ」というチェコの文豪ミラン・クンデラの代表作の小説をまるごとテーマにしたオリジナル音楽作品として、同名タイトルで。大元となった小説は、1968年のプラハの春の時代背景に書かれている、一応恋愛ものなんですが(映画の方が有名かもしれません)、作者クンデラの普遍的かつ哲学的な問いかけをギュギュッと凝縮した日本語の歌詞にして、音楽と融合させて一つの音楽作品として仕上げました。結果的にはプロジェクト自体は2年ほどの期間を費やして、試行錯誤しながら、作詞、作曲、演奏、とコラボしつつ仕上げていきました。
このプロジェクトのためにバンド活動を再開したんですけれど、1枚目の自身のアルバムの時のバンドBe-Spellのメンバーだったギタリストの夫もベーシストも亡くなってしまったので、残った歌の私とパーカッションにプラスして新たに他のメンバー、ピアノ兼作曲、トランペット、ギターを入れてのチャレンジでした。」
「実は当初チェコのプラハでの録音を予定していたんですよね。舞台がプラハの作品だし、せっかくならたっぷりとその場の空気を肌で感じて、雰囲気に身を委ねて録音しよう!と思いたったら、すぐプラハの録音スタジオと録音技師を探してました(笑)。
ところが、全てオーガナイズして飛行機も予約してたのに、コロナで出国もままならなくなり泣く泣くキャンセル。急遽切り替えて河口湖のスタジオで2020年6月に録音しました。しばらく大きな会場でのコンサートもできずにいたのですが、コロナ禍の狭間の2021年6月に、サントリーホールブルーローズで日チェコ交流100周年記念コンサートとしてお披露目することができました。実はそのまま勢いをつけて、今年の秋はヨーロッパツアーにも行くぞ!と諸々企画していたのですが、頓挫して気が抜けて… 現在しばしバンドは休息中という感じです。」
「この“Be-Spell“というバンドの他に、もう一つ定期的に継続している活動のひとつに、“未踏の地“ というユニットがあります。幼少の頃からバリバリとクラッシックのピアニストになるために訓練してきたピアニストと、全くその素養なしのヴォーカルという両極端な組み合わせで、こちらもかれこれ5年ほどやってますが、世界の美しい音楽をテーマに、クラッシックからフォークロアー、ポップスまで独特な世界観でアヴァン・ポップな音楽をやってます。その他は、マタイ受難曲(バッハ)の大プロジェクト等にも参加しています。」
<Noriko Suzukiさんの演奏 Youtubeより>
Noriko Suzuki with Be-Spell “Es Muss Sein “ 存在の耐えられない軽さより
Noriko Suzuki with Be-Spell “Es Muss Sein “
サントリーホールブルーローズ・コンサートより
Noriko Suzuki with Be-Spell
サントリーホール・ブルーローズコンサート・ダイジェスト版
Song X folklore session 2021 for International jazz day 2022
長野茅野の森
“Smile” Duo “Brave New World” ~ 未踏の地
「自分の人生好きなように生きなさい」
「音楽を生業とするにはどうしたらいいの?、と大きく舵を切ったのは大学4年の時でした。高校2年の夏からアメリカに単身留学して、アメリカの高校を卒業した後、帰国して入学した大学では英語劇サークルでミュージカルをやり、同時進行でヴォーカルスクールに通い、そこから始まってジャズや洋楽などをライブハウスで定期的に歌い始めました。当時、学費を自分で稼いでいたのですが、いくつものバイトを掛け持ちしながらハードな大学の授業を受けて単位を落さないで卒業するのは、めちゃくちゃ大変で、常に立ち止まることなく走り回っていたような… 今思うとライブなんてやってる時間がよくあったもんだなあと不思議でなりません。若いって凄いことですよね。
そして、普通ならば就職活動して… という時期に、歌を歌いたいので普通に就職しなくてもいいかな?と、反対を覚悟で恐る恐る父に話したら、意外にも “別にこうあって欲しいという期待はしてないから、自分の人生好きなように生きなさい“という驚きの返事がサラッと返ってきて。。。
この時のことは今でもよく覚えています。もちろん反対を覚悟していたので肩透かしを食らった気分でしたが、アメリカに一人いかせてくれた時もこの時も、時を経て思うのは子どもの選択を信じて本人に責任を負わせることがいかに大切かということ、そして、そうしてくれた父と母には大きな感謝しかありません。
そんな訳で大学卒業後も音楽の世界を浮遊しつつ、共通のバンドを通してギタリストの夫と出会い、共に音楽をはじめて家族となり、子育てしながら2000年にリーダーアルバムBe-Spellを作り、学生時代から始まった旅とともにある人生も、結婚して親になってからもやり続けてました。」
呪文のごとく、心と身体に…
「音楽の扉より、呪文の如く(Be-Spell)、それに触れる人の心と身体にスッと入り込み、感情を揺りうごかす何かを伝えること。そして、その何かと出会える瞬間、その何かと出会える世界を作って、誰かの人生に語りかけること。
そんなことができたらいいなと思ってます。音楽を演奏し歌うという、私の大切な体験を「贈り物」にして、皆さんにお届けできたら幸せです。
最近は歌うことで、自分自身も癒やされているなと確信してます。そして、これも大事な要素だったりするのだなあと思うのです。」
<Noriko Suzukiさんの2022年後半のスケジュール>
10/22( 土)@国分寺 giee 19:30〜
加藤崇之(g)Noriko Suzuki (vo)
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10/28(金)新子安しぇりる 19:00〜
高田ひろ子(p) Noriko Suzuki (vo)
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10/29( 土)@横浜エアジン 18:00〜
横浜国際なんでも音楽祭秋 “未踏の地” episode#43
改新未踏の詔<かいしん みとうの みことのり>
ゆい。Soleiyu (piano / melodica / chor)
Noriko Suzuki(vo)
配信チケット予約: https://umemotomusica.stores.jp/items/632c5e3b23747f3ff2d3f860
店内予約: http://airegin.yokohama/
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11/6 (日) @瀬戸田ベル・カントホール(尾道市・生口島)
『シネマ・パラダイス』 15:00〜17:30
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11/15(火)@日暮里 Bar Porto 20:00〜
Noriko Suzuki (vo) 前原孝紀(G)
http://barporto.cocolog-nifty.com/
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11/26( 土)@横浜エアジン 18:00〜
“未踏の地” episode#44
ゆい。Soleiyu (piano / melodica / chor)
Noriko Suzuki(vo)
配信チケット予約: https://umemotomusica.stores.jp/?all_items=true
店内予約: http://airegin.yokohama/
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12/6(火)@大塚グレコ 19:30〜
Noriko Suzuki(vo)高田 ひろ子(p)
店内予約: http://www.greco.gr.jp/
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12/16(金)@横浜エアジン 18:00〜
“未踏の地” episode#45
ベートーベンの誕生祭
ゆい。Soleiyu (piano / melodica / chor)
Noriko Suzuki(vo)
配信チケット予約: https://umemotomusica.stor
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12/18(日)@尾道 Gallery Cafe ULTRA
Noriko Suzuki (vo) 高田ひろ子(p)
artcafe@ultra-ams.com
ほろ酔いノミニケーションで
「外でお酒を飲む時は、一人か少人数の時が多いですね。大人数よりその方が好き。
食事と一緒のときはワインが多くて、最近一人で飲みに行くのはもっぱら行きつけのバーで、ジンやラム、ウイスキーなどの蒸留酒をチビチビ飲んでは楽しんでます。
お酒の場もお酒も好きなのですが、アルコールに強い体質ではないので量があまり飲めないのが玉に瑕。それを言うと飲めそうな風貌とのギャップに驚かれる方が多いですけど、実は可愛らしく、あっという間にほろ酔いになってしまいます(笑)。
そんな訳で、チャンポンしてぐるぐる目が回るような二日酔いになったことは人生で3回。日本酒が入ると危険なことはわかってます(笑)。
若い時はもっと飲めないと思っていたお酒なんですけど、最近は相変わらず顔は赤くなれど、思っていたよりも飲めることがわかってきて。。これまでの人生の中で今が一番アルコール摂取量が多いのではないかと思います!という訳で、まだまだ肝臓は酷使していないので、若々しいはず!と信じてます。
いずれにせよ、気のおけない友人と飲むお酒と、ライブの後のお酒が楽しく美味しいですね。」
「最近は尾道に移住した娘がきっかけで、しまなみの島々に行くことが増えたんですけど、たまたま飲んでたお店で知り合って不思議にご縁が繋がって、東京から離れた尾道の方でも演奏の機会が生まれたり… と地方でのノミニケーションの威力を感じます。尾道で飲んでると、誰かしら共通の知り合いの名前が出てきて、興味深い人たちと繋がるきっかけができますね。
そういえば、20代の頃、長期でインドを旅していた時にしばらく滞在していた海辺のレストランで、インドのビール、キングフィッシャーを飲みながらア・カペラで歌ったことがあって… 帰り際にお店のオーナーや聴いていたお客さんがいい歌だったから… とルピア(インドの通貨)で志をくれたのを思い出しました。そして、インドで飲んでたアルコールはもっぱらビールだったなあと思い出しました。そう、カレーにはビールです!」
一緒に飲みたかった
「ガージェリーはもうかれこれ15年以上のお付き合いになる、Bar Portoで演奏の時にいただくことが多いですね。亡くなった夫のご縁でここで歌うことにもなった訳ですが、夫は特に演奏後にガージェリーを飲めるのを楽しみにしていたのを記憶しています。とはいえ、二人で一緒に演奏に行く時は預けてくる子どもらのこともあって車で行くことがほとんどで、当時子育てメインであまり外で飲むことがなかった私に夫は飲む権利を譲ってくれてました。だから一緒に飲めたことがないんです。一緒に飲みたかったなあ… とポルトに行く たびに思う、
ガージェリーは私にとってはそんな存在のビールです。」
協力:Bar PORTO