GARGERYが似合う大人の女性アーティストにスポットを当て、リュトンを片手に、思い思いのストーリーを語っていただいています。日暮里のBar PORTOでミュージシャンの雨野亜希子さんにお話をうかがいます。
–普段どのような活動をされているのでしょう?
「現在は東京近郊を中心にソロやユニットで活動しています。ソロのスタイルは、ジャズやブラジルを基本としながら、日本語の曲やオリジナルも入れた、いわゆる「ごった煮系」ですね(笑)。ユニットは、ボサノバやサンバを複雑なハーモニーで歌う「トレス・パッサリーニョス」というユニットです。ポルトガル語で本格的なコーラスを歌うユニットは、日本ではおそらく他にいないぐらい珍しいんですよ。」
「2022年3月に、初めて自分のソロアルバムを配信とダウンロードでリリースしました。過去にも何度か録音したことはあったのですが、大体納得出来なくて全部お蔵入り。でも最近、このまま死んで後悔しないかな?と真剣に考えて、ようやくリリースまでちゃんとやろうと決心できました。先述のユニット「トレス・パッサリーニョス」では2年前にアルバムを作っていて、その時の経験も後押ししてくれましたね。」
雨野亜希子オフィシャルサイト
https://amanoakiko.amebaownd.com/
アルバム配信先
MV(Youtube)
「ライブの方はコロナ禍で減ったりしていましたが、昨年ぐらいから初めてのお店にも出演させていただく機会が増えたり、気が付いたら前より歌っているかもしれません。配信する事も多いですね。最初は画面が横を向いたまま始めてしまったりしていました(笑)。いまだに配信前はバタバタして落ち着きませんが、それでもなんとか音楽を届けたいという一心でやっています。でも、遠方でとてもライブに来られないような人がすごく喜んで聴いてくれたりして、試行錯誤しながらの配信ですが続けて来て良かったと感じています。」
ジャズボーカルへの道
「もともとは高校のブラスバンドでトランペットを吹いていたんです。そこに来たOBの先輩から、「お前これ聴いてみろ」ってメイナード・ファーガソン(ハイノートで有名なトランペッター)を聴かされたんですよ。バッキバキのサウンドに、「なにこれカッコいい!やりたい!」と言って、高校卒業と同時にその人のいる社会人ビッグバンドに入れてもらいました。私、青短(青山学院女子短期大学)だったので、本当は青山大学のビッグバンドに入りたくて名前も調べてあったんですけど、なぜかサークル勧誘の誰に聞いても「そんなの知らない」と言われて。気がついたらテニスサークルに入っていました(笑)。今考えてもあれは謎ですね。」
「まあそんな感じで大学のビッグバンドは諦めて社会人ビッグバンドでしばらく吹いていたんですけど、自分はトランペット下手だなと薄々わかっていて。一方で歌だけは昔から一応褒められていたので、こっちの方が自分の大好きなジャズを表現できるかもしれないと思い始めたところ、ちょうど友人がジャズボーカルを習いに行くから一緒にどうかと誘ってくれて、そこから沼にハマって行きました(笑)。これはこれで全く思うように歌えなくて結局苦労するのですが、なんだかんだやめられず追い続けています。結局歌が好きなんですね。」
「私はスキャットをなるべく積極的に入れているのですが、それはこのトランペット時代の怨念(!)というか、「本当はトランペットでこういう風にソロやりたかったなー」というのがあるからなんだと思います。でもスキャットって楽しいんですよ。歌って、どうしても歌詞の世界以上の事はできないけど、スキャットは完全に自由。歌の世界をはみ出して遊ぶ感覚で楽しめるので大好きです。なので、怨念だけではないですよ(笑)。 」
「そんなこんなでジャズボーカルを5年ぐらい習ったところでどうしてもBerklee音楽院に行ってみたくなって、仕事をやめて留学しました。「私、留学してくる」と言った時の、母の「あんた、お金と英語はっ?!」という驚愕した声が忘れられません。お金は運よく奨学金をもらえたのでよかったですが、英語は苦手だったので苦労しました。」
ブラジル音楽への道
「こんな感じでまずはどっぷりジャズっ子だったのですが、最初に日本で習った三槻直子先生がポルトガル語の基礎を教えてくださったり、Berkleeでもブラジル音楽の講座をとったりと、ブラジル音楽にも興味があって少しかじっていました。当初は有名なボサノバのレパートリーを少しずつ増やすぐらいでしたが、留学から帰ってから知り合った音楽仲間から、ポルトガル語でボサノバを歌えるならぜひ歌いに来て欲しいとバンドに誘ってもらったんです。それが行ってみたら、全然知らないサンバとかばかり(笑)。変なおじさんがパンデイロ叩きながら歌っているんだけど、すごくカッコよかったんですよ。ここでボサノバだけでなく、もう少しディープなブラジル音楽にも触れて、コード観、歌詞の世界観、独特なリズムにすっかりハマってしまいました。その後、結局ブラジルにも行ってみたくなって、バッグパックで南米を陸路で横断する過酷な旅に出るんですが、それは長くなるのでまた(笑)。これは人生一っていうぐらい面白かったです。それからずっと、ジャズとブラジル音楽が自分の基礎になっています。」
伝えること、受け止めること
–ミュージシャンとして大切にされているのはどんな事でしょう?
「技術を磨くのはもちろんですが、曲の世界観や魅力をしっかり伝える事を大事にしています。そしてその音楽がサウンドしているか、自分が楽しんでいるかですね。」
「あとは、例えば本を読んだり、綺麗な花や絵をみたり、家族や友人と楽しく過ごしたり、辛い経験や悲しみを乗り越えたり、そういう事すべてが自分の音楽に繋がると思っているので、日常の1つ1つの事をなるべく受け止めて、大切にしたいと思っています。」
「今回リリースした「RAINDROP 1」は私の中ではジャズ寄りのプロジェクトだったので、次はブラジル音楽を軸に据えたものを録りたいと、頭の中で企画進行中です。オリジナルもだいぶん増えて来たので、それもどこかで録ろうと。まずは配信とダウンロードのみですが、色々録り貯めたら、CDとかアナログ盤にするのが最終目標です。」
「ライブも少しずつ増えてきてありがたく思っています。すごーく人見知りなので安心して出来る決まった人とばかりやって来たのですが、それはそれでさらに深掘りしつつ、新たな方との演奏にもどんどん挑戦して行きたいですね。応援いただけるとありがたいです。」
“外飲み”大好き
「キャンプとかアウトドアで飲むのが大好きなんです。キャンプまで行けなくても、気候がよければよく意味もなくベランダに出て飲んだりします。本当の「外飲み」ですね。夕焼けを見ながらとか、飛行機雲を見ながらとか、ぼけーっと飲むのが最高。本当はそこでガージェリーを飲めたらもっと良いんですけどねー、ふふふ。」
–外飲みで何か印象深い経験や思い出はありますか?
「たくさんありすぎて絞れないですね。若い頃のワイワイした飲み、留学先でよく飲んだ安いビール、背伸びして銀座のバーで飲んで感激したブラッディメアリー、父と初めて外でサシ飲みしたお酒、キャンプで明らかに人数より多く空いていたワインのボトル、ブラジルの道端で自称芸術家と飲んだカシャッサ、どれもこれも思い出深いです。失敗した思い出も山ほどあります…。」
「私がガージェリーを飲むのは今回取材いただいた日暮里のBar PORTOさんでのライブ後が一番多いですね。ライブってやはりギュッと集中して緊張もするんですけど、それが終わってワーッと解放された時に飲むので、ガージェリーさんには本当にライブごとのたくさんの思い出がギュッと詰まっているなと思います。」
協力:Bar PORTO