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【along with her story】イラストレーター溝尻奏子

GARGERYが似合う大人の女性アーティストにスポットを当て、リュトンを片手に、思い思いのストーリーを語っていただいています。今回は、ガージェリーホームページのトップ画像などに使用しているリュトンを持った女性の横顔のイラストや、ガージェリーカードのイラストを描いていただいた方からお話をお聞きします。

今年の秋にオープンしたばかりのアーティスティックな内装が素敵なCOCKTAIL WORKS 神保町で待ち合わせです。
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「イラストレーターの溝尻奏子です。本日はよろしくお願いいたします。」

ライブ感を大切にするスケッチャー

-溝尻さんの作品を見ていると、海外で描いていらっしゃるようなイメージがありますが、実際はどこで描かれることが多いのですか?

「日本でも日々描いていますが、平日は働いているので、旅行中のようにまとまって描く事は少ないです。仕事は、都内にある中高一貫校の美術教師をしています。仕事が早く終わった日には植物園に行って花の絵を描くのが好きです。自然物の姿形は不思議で魅了されます。

友人知人との食事の場でもよくスケッチしますね。自分を含めて二、三人だけだとあまり描かないですが、大人数の食事会であれば、一枚になるべく多くの人を描く様にして、招待していただいたお礼として主催者にプレゼントしています。大人数といえば、結婚式と披露宴の様子をライブで描くお仕事もしています。ウエディングフォトグラファーならぬウエディングスケッチャー、といったところでしょうか。たくさんの人が華やかに着飾って、みんなが喜び笑顔が絶えない空間に居合わせて、それを見つめながら描けることはとても幸せです。依頼者の方からも、珍しさと、写真とは違う良さがあって記念になると、とても喜んでいただいています。

また、イラストのお仕事のご依頼を頂いた時でも、内容によっては写真等の参考資料を元に描くだけでは物足りないと感じるので、イメージに合った場所に出かけていき、例えば人の集まりがモチーフならカフェに行ってたくさんスケッチして、最終的にそれらを自宅の仕事場でまとめるようにしています。自分がその場にいるように感じるようなライブ感を大切にしています。」

あの横顔は彼女が描き出した

「ガージェリーの女性イラストのお話を頂いた時は、雰囲気の良いレストランへ行き、当時社会人になったばかりの妹に絵のモデルを頼みました。美味しい食事の助けもあって、リラックスしつつ良い緊張感を持った表情が描けたのではないかと思っています。」
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「ガージェリーを扱っているお店ってどこもお洒落で落ち着きがあって、格好良い雰囲気のところばかりですよね。そんなお店に自分のイラストのポップが置かれているのは嬉しいです。

実は私、お酒はあまり飲まない方で、月に二回か三回くらいだと思います。ワインや果実酒が好きですが、ガージェリーは他のビールとは違う深い味わいがあって、美味しいだけではなくリュトングラスの見た目も美しいので大好きです!」
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「ガージェリーカードの依頼を受けたのはちょうど去年のクリスマスシーズンで、イギリスにいたんです。留学中によく行ったパブで友人と再会したり、店内でドローイングしたりしていて。そんなこともあり、小山田さんのショートストーリーを読んだ時は、“この主人公はイギリスに駐在していたかもしれないよね”って都合のいいように解釈して、“それにこちらのパブは歴史が長いから、ディケンズの「偉大なる遺産」に出てくるガージェリーもかつてこういう場所で仕事後の一杯を楽しんでいたかもしれないな”って想像を膨らませながら、冬のイギリスのパブをイメージして描きました。」
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「絵の中に引き込まれそうと言われると嬉しいです。店内は私の記憶やスケッチなどの資料を元に組み立てて想像して描いたものですが、この暖炉の上にかけられた額には”William Cobbett”という実在するパブの絵が入っているんですよ。」
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「自宅で描くイラストの仕事でも、季節や気温を感じるような、ライブ感を大事にしたいと思っています。」

-ライブといえば実際にミュージシャンのライブでも絵を描くそうですね

「ライブコンサートに行って生演奏を聴きながら絵を描くのは大好きです。この素敵な時間を覚えておきたいなって思いながら、音楽と演奏者とお客さんがいる空間を捉えたいというか。ミュージシャンに頼まれ、演奏中のポートレートを描くのと引き換えに席を押さえてもらう事もあります。クラシックもジャズも、ソロもオーケストラも、クラブでもなんでも描きますよ。」

「このお店に来る前、電車で目の前に座った人をスケッチして差し上げたんですよ。」

-そういうことは、よくあるんですか?

「以前から、クリスマスを待ち望むアドベントの時期には電車で見かけた母子のスケッチを描いて、降りる際に手渡しています。驚かれますが、喜ばれますよ。友人から、子育てがいかに大変で出かけるのも一苦労だと聞いているので、頑張っているお母さんたちを応援する気持ちを込めて描いています。Mother&Childシリーズを始めた頃は渡す前に記録として絵の写真を撮ってたんですが、今年はほとんど撮っていません。電車で写真を撮るのは気まずいし、シャッター音が大きいので・・・。」

欧州の色彩に動かされた

-海外へ一人旅をされるのですね。危ない思いをされたりしませんか?

「一人でも安心して旅行できる地域を選び、行動にも気をつけています。幸い危ない目にあったことはありません。スマートフォンも持ち歩かないですし、真夏でも風通しの良い生地のカーディガンやロングスカートを着ます。博物館や教会、モスクなど見学させてもらう時にも相応しい格好をするようにしています。ただ、最近は有名な観光地や、ここが狙われるとは予想もできないような小さな村でもテロ事件がありますし、自然災害だって起こり得るのでどこが絶対安全だとは言えないですね… 気をつけるべきところは気をつけて、過信しないであとは健康でいられることに感謝して祈ります。」

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「今までで一番危険だったのは南米を旅行した時だと思います。ペルーの古都から数日間かけてマチュピチュまでインカ古道を歩いていく現地ツアーに参加した時のことですが、途中の一本道で土砂崩れが起きました。幸い巻き込まれなかったのですが、その場所の手前で一旦谷に下りて川の反対岸に渡って、しばらく歩いて崩れた箇所を通り過ぎ、行けるところまで行って、また川を渡り滑りやすい崖を登って再び同じ道に戻らなければなりませんでした。土砂崩れが再び起きないとも限らないので恐怖でした。その後の道中も険しかったですが、励まし合って、壮大な自然に圧倒されて、宿屋の水シャワーで気を引き締めて。最終日、まだ日の出ないうちからマチュピチュに登り、朝靄の中、人の気配のない遺跡を見渡した時は心が震えました。」

-そんな時でも絵を描いていたのですか?

「その時は今のように常に描くという習慣がなかったので、南米旅行中のスケッチはとっていません。試みましたが日差しが強過ぎて白い紙の照り返しが眩しかったのも理由の一つです。今なら画材で工夫をしていると思います。

旅行先でのスケッチは約10年前から始めていたのですが、日課の様になったのは2013年のイギリス留学がきっかけです。授業後、友人たちと毎晩の様に集まって、音楽をかけながら踊ったりまったりしたり写真を撮ったり映画を観たり。私は中でもよくドローイングをしていました。年間を通して曇りの多いイギリスにずっと篭っていたので、夏に南欧から中欧、北欧を旅した時は、日の光の眩しさと色彩の鮮やかさに衝撃を受けました。世界にはこんなに美しいものが溢れているんだ!って何にでも感動しました。それが荘厳な雰囲気の建物でも、何気ない街角でも、夕暮れ時のだだっ広い海景でも、心が動かされた景色を目の前にした時は、いつもドキドキしながら、この瞬間の感動を忘れないためにスケッチブックに描いてきました。好んで使った画材は色画用紙にクレヨン、色鉛筆、ボールペンです。いつも身軽でいたかったので、ある程度描きためた時点で旅先からイギリスの家に送っていました。

今思うとあの旅行がターニングポイントだったと思います。忙しい大学の授業から解放されて、帰国前の自由な2ヶ月間、ひたすら描けることに喜びを感じました。」
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描く、よく観る、そして出逢う

「描くとよく観るんです。よく観ないと描けないので。なので美術館や博物館では沢山写生します。造形的な力強さ、表情のユニークさ、巧みな技、構成の妙など素晴らしい点にたくさん気づけるんです。いつも静かに感嘆しながら描いてますよ。一つの絵の前に3時間立ち続けて模写をしたこともあります。ウフィチ美術館のボッティチェリの間は観光客でごった返す展示室なのですが、描き終わった時には警備員が近寄って来て「君の忍耐力は素晴らしい」と声をかけてくれました(笑)。」

「この調子でひとり旅では一つの美術館に何時間でも滞在できますが、連れがいる時はそうはいかないですね。以前、現代アーティストの先輩が仕事でフランスに来たので同行した事があったのですが、1日に何箇所も回るので、展示室一つにつき5分以内で描いて行くみたいな実験をしました。白い紙にボールペンの単線で空間をつかむ練習というか。その時はほとんど歩きながら描いた様なもので、いいトレーニングになりました。描きっぱなし感がですぎたものにはUberの中で一色書き足すなど少し手を入れたり。その旅行の後は、走行中の二階建てバスから見下ろした街や、電車から見る風景など動きながら景色を捉える事が楽しくなりました。とはいえ、新幹線は景色を描くには走行スピードが速すぎるし、飛行機は地上から距離があり過ぎます(笑)。」

-大きな絵を描くことはあるのですか?

「個展に合わせて大きめのキャンバスにアクリル絵の具で描くこともしますが、普段はあまりしないです。私は藝大で陶芸を専攻したので、粘土を伸ばしてレリーフ表現をし、その上に高温で焼成するとガラス質になる釉薬で色彩を施して陶板画を制作します。焼きあがるまで完成図を予想しづらいのが少し難点ですが、使う釉薬が透明なので、たくさんの色が重なり合って深みのある色調を出せた時はすごく嬉しいです。特に光によってその見え方が変化するのが魅力です。一番好きなのはお日様の光の下で陶板画がキラっと見える時。絵画に使われる顔料と違って、焼き物は直射日光を浴びても退色しないので、お気に入りの作品は明るいリビングに飾っています。」

「来年の夏は丸々1ヶ月ヨーロッパを旅行する計画を立てています。どんな景色に出会えるか、今から楽しみです。良い作品に繋がるように応援していてくださいね。」
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協力: COCKTAIL WORKS 神保町

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